食物アレルギーの予防:最先端の研究から

食物アレルギーを予防する目的での、妊娠中・授乳中の食物除去や、離乳食の開始を遅らせることは、効果がないことをお伝えしました(「アレルギー予防のための妊娠・授乳期の食事」「アレルギー予防のための離乳食の進め方」をご参照ください)。「じゃあ親として、子どもの食物アレルギーのリスクを減らすことはしてあげられないの?」と心配になってしまう方もいるかもしれません。残念ながら、今のところ食物アレルギーの予防方法として確実に証明されたものはないのが現状です。ただ最近の研究成果から、少しずつ予防法として可能性のあるものが見つかってきています。まだ今後の検証を待たなければならないことも多いですが、パパ・ママがお子さんのためにしてあげられることはたくさんあります。

今回は食物アレルギーのリスクを減らす可能性のある、生活のポイントを3つご紹介します。

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スキンケアはしっかりと!

お子さんの健康な肌を保つために、スキンケアをしっかり行いましょう。実は、荒れたお肌に特定の食品などが付くと、本来なら体に無害のものでも過剰な免疫反応を起こしてIgE抗体を作り始めるのではないかと考えられています※ⅰ。「食べものをお肌に塗ったりしないよ」とお考えかもしれませんが、ホコリに混ざり、アレルゲンとなる物質が漂っています(例えばホコリの中のピーナッツタンパク質など※ⅱ)。これは目に見えず避けることはできませんので、対処法として日頃から皮膚のバリア機能を高めておきしょう。そのためには、お肌を清潔にした後に保湿をしっかり行うスキンケアが基本となります。(動画「泡の作り方」「赤ちゃんの洗い方」「軟膏の塗り方」もご参照ください)

離乳食は遅らせず、偏らせず

離乳食は、生後5~6か月頃から始めます(「アレルギー予防のための離乳食の進め方」をご参照ください)※ⅲ、ⅳ 。離乳食を初めて1ヶ月ほどで1日2回、3~4か月(生後9か月頃)で1日3回と、離乳食の回数を増やしていきます※ⅳ。食べる食品の数も増やしていき、1歳ではほとんど大人と同じ食品が食べられるようになります※。特定の食品を避けたりせず※ⅴ 、また、特定の食品ばかりに偏ったりしないで、いろいろなものを少しずつ食べさせるようにしてください(「アレルギー予防のための離乳食の進め方」をご参照ください)。アレルギーの症状が疑わしい場合や、心配な場合は専門医に相談してください。

アレルギーが心配な食品は、いつから食べ始めるのがいいの?

2015年になり、重要な研究成果がヨーロッパから発表されました※ⅵ。アナフィラキシーを起こしやすい食品の1つであるピーナッツを、生後4~10か月から食べ始めるのと5歳から食べ始めるのではどちらのピーナッツアレルギーが少ないのかを比べた研究です。結果は、4~10か月からピーナッツを食べ始める方がピーナッツアレルギーは少ないというものでした。欧米と日本では食生活が違いますから、実際に生後10か月以下からピーナッツを食べ始める必要があるのかは分かりませんが、重要な点は「食物アレルギーの頻度が高い食物も、除去するより早めに食べるほうが良い」可能性が高いということです。現在、世界中で卵や牛乳、小麦に関しても早くから食べたほうがいいのかどうかという研究が進行中です。近い将来、これらの食品についてもいつから食べ始めたほうが良いのか解明されることが期待されます。

※1歳でほぼ大人と同じ食材を口にすることはできるようになりますが、誤嚥のリスクがありますので、固さや大きさには注意が必要です。特にピーナッツを摂取する場合は、粒で食べさせるのでなく、ピーナッツバターやピーナッツ含有のお菓子などで摂取するようにしてください。
また、ハチミツは乳児ボツリヌス症予防のため1歳までは避けてください。

生活のリズムを規則正しく

規則正しい生活は心身ともに健康をもたらします。肌の調子ばかりではなく、日頃からお腹の調子や体調を整えておくことも大切です。また、体を動かしての遊びやお昼寝などの睡眠時間はきちんと確保しましょう。体調が悪い時は食物アレルギーの症状も強く出現しやすいことがあります。いくら規則正しい生活をしていても体調が悪いときもあります。体調が優れないときは初めての食品を与えないようにしましょう。

スキンケア、離乳食のタイミング・種類、規則正しい生活。この3つが食物アレルギーを遠ざける重要なポイントということがお分かりになりましたか。健康的な生活は子どもも大人も関係なく、いいことずくめです。ぜひ、今日から実践してください。

ここがポイント!

  • 「スキンケア」、「離乳食のタイミング・種類」、「規則正しい生活」が、食物アレルギーのリスクをへらす可能性がある。

こちらも併せてご覧ください


ⅰ:Lack G. Epidemiologic risks for food allergy. J Allergy Clin Immunol. 2008;121:1331
ⅱ:Brough HA, et al. Distribution of peanut protein in the home environment. J Allergy Clin Immunol 2013;132:623-9.
ⅲ:日本小児アレルギー学会 食物アレルギー委員会著「食物アレルギー診療ガイドライン2012」
ⅳ:厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」平成19年
ⅴ:Muraro A et al. EAACI food allergy and anaphylaxis guidelines.Primary prevention of food allergy . Allergy 2014;69:590–601.
ⅵ:Du Toit G,et al. Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy. N Engl J Med. 2015;372(9):803-13.


監修者

大矢 幸弘医師

大矢 幸弘(おおや ゆきひろ) 医師

国立研究開発法人
国立成育医療研究センター

生体防御系内科部アレルギー科医長 医師

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夏目 統医師

夏目 統(なつめ おさむ) 医師

国立研究開発法人
国立成育医療研究センター

生体防御系内科部アレルギー科 医員 医師

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